カテゴリー別アーカイブ: 質問に答える

あがり症の方に

音楽家などの方から、コンサート、あるいはオーディションなどの本番であがってしまって普段どおりに演奏できない、と、相談されることがよくあります。「ふだんは、そんなこと起こらないのに、手がふるえたり、動かなくなったりする」と。
「そんなときどうしたらいいか」ということですが、本番の「そのとき」に対処できるアイデアも、ありますが、それと同時に「ふだん」のことを見直すこともやっぱり大事なんですね。

「ふだんは問題なく弾ける」と、たいがい、言われるし、それは本当だと思うのだけれど、ふだんも実は、問題ない程度に起きているなにかがある。ふだんなら問題がない何らかのその人の傾向が、本番になってアドレナリンが出てきたときに、強調されて現われてくる。そしてそれが、自分のパフォーマンスを邪魔することになってしまったりします。

それを変えたいとか、見直したいと思うのなら、やはり、「ふだん」のことを見てみることからはじめるのが、早道なのではと思います。

たとえば演奏家は、指の動きについてはすごく意識が高いのだけど、胴体とか、足とか、首とかのことは意識したことがなかったりする人が多いようです。また、楽器を持って演奏する人でも、ひじについても意識したことがないという人もいます。また管楽器奏者で唇のことばかり意識しているという人もいたりします。

その部分での動きに「自分は問題がある」と思うからこそ、そこばかり意識するようになっているのですが、その意識の持ち方が逆効果になっていることがあります。問題があるからこそ、その「問題」からいったん離れてみて、全体に戻ることが、問題解決の早道であることが、実際は多いのです。

自分という体全体を使って楽器を演奏しているときに、意識が、一部分だけに偏っていると、サポートをなくしてバランスを崩してしまい、無理やりバランスをとるために体を固めざるを得なくなってしまったりします。体を固めることが必ず悪いというわけではないけれど、身体の一部分だけを固めて、それ以外の部分と切り離されているような状態が長く続くと、苦しくなってしまう場合が多かったりします。

そういう傾向が大問題になっているときではなくて、問題と言えないほどのわずかな傾向であるときのほうが、変えることがしやすいかもしれません。

私のアレクサンダー・テクニークのレッスンではそういうことをサポートします。

ときによっては楽器をかまえる以前のところで、ただ座るという動きをやってみたり、「楽器をかまえる」というのをひとつの動きとして見直してみたりもします。

そして、その人にとって簡単に弾けるフレーズを弾いてみる、そして苦手なところを弾いてみる、それぞれ何が起こるか見てみます。その人、その時によって、どこがクリティカル(=その人にとって決定的な瞬間)かは違うので、お会いして実際に立ちあいながらライブですすめていきます。

そのうえで、人前でパフォーマンスしてみると、緊張の度合が減っているということはよくあるのです。

「ふだん」のことと、人前に立ったときなどの本番の状況のことと、両方を見てみるのが、あがり症や、緊張への対処のワークとして有意義だと思います。

→あがり症(続き) 本番のとき

アレクサンダー・テクニークlittlesoundsでは、東京と神奈川で個人レッスンを、それぞれ週に3日づつ行っています。
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テーブルワークについて/意識のしかたの質、など

 アレクサンダー・テクニークでは、
まず、首が自由になること、首が楽になることからはじめる
首が長くなることを思って/縮めるのを抑制して、動くということを、よく言います。ただ、ときによって難しいのが、首のことを思うことで、意識が首だけに集中してしまってうまくいかないこともあることです。
自分でワークすることを重ねてきた生徒さんに、「首のことだけを毎回、毎回、考えていて、かえって首を固めてしまった」と言われることがあります。意識を向けることで、楽にする、自由にする、ことが目的なのだけれど、逆になってしまうことがある。

そういうときは、それより「じぶん全体のつながり」のことを思い、そのうえで、意識が薄くなっている部分とか、体の奥行きなどに注意を向けることのほうが、まずは、より必要かもしれません。

もしかしたら日本人は、西洋の人にくらべてディテールに意識を向けることが得意な人が多いのかもしれません。
それでなのか、わかりませんが、首に意識を向けることで首がなおさら緊張してしまうという人、よくおられます。

そんなこともあって、私のレッスンでは最近は、首のことと同じくらい、あるいはそれ以上に、「自分全体」「奥行きを思い出す」ことを言うことが多いです。

それと、私のレッスンでは、レッスン時間の一部に、テーブルの上に寝た姿勢になって休んでもらってワーク(「テーブルワーク」と呼んだりします)することが多いのですが、これをやるのは、上に書いたようなことが理由のひとつです。

「(背骨が、あるいは体全体が)ゆるんで長くなる」というのは、本当に無理のない自然なことだ、

ということを、学びの準備として、体感してもらって、それをふまえた上で、自発的に動きを選択することを学ぶ、という順番を、私はとっていることが多いです。

それでだんだん、「意識を向けること」の質自体が、もっと、努力の少ない、自然なものでいいんだ、
ということが、実感できてくるとよいと思うのです。

テーブルワーク
テーブルワーク

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テーブルワークをやると、「とても楽になりましたが、これは自分で家ではできませんよね」と言われることがありますが、
自分でもできます。

少し古いブログですが、以下を参照してみてください。
セミスパイン~家でできること

アレクサンダー・テクニークlittlesoundsでの、アレクサンダー・テクニークのレッスンのスケジュールとお申込みはこちらをご覧ください。

テーブルワークは、やめていくプロセス。

レッスンやワークショップなどでいただいた、アレクサンダー・テクニークの原理やその他にかんする質問に、答えていくコーナーの続きです。

Q テーブルワークをやってもらうと、とても楽になります。また、立って腕を動かしてもらうだけでも、とても楽になります。でも、なぜなのでしょうか? 正しい位置に来てるからかな、と思うのですが、その正しい位置が、自分ではわかりません。

A 実は位置の問題ではないのです。

 簡単に言うと、緊張の度合いが減ったことによって楽になった、それだけのことです。
 では、どうやったら不必要な緊張を手放すことができるのか?

 よくあるなのが、緊張を手放すために、無理にストレッチしたりすることです。
 ストレッチが悪いわけではありませんが、ありがちなのが、緊張を手放すことでさえも、やりすぎてしまうことです。(ストレッチするときには、ゆっくり丁寧に、自分を観察しながら、無理せずやりましょう。)

 私たちは、何かを「やる」ことによって物事を解決することに、とても慣れています。
 でも、アレクサンダー・テクニークでやるのは、それとは違う、問題解決の方法です。
 気づかずにやりすぎていることを、やめることによって、解決をめざすのです。

 テーブルワークは、そのような、「やめていくプロセス」を体験するために行う、といえます。

   ******

 私たちは、ただ立っているときでさえも、緊張がゆるまないまま立っていることが少なくないです。
 自分を支えようとするときに、緊張して支える癖がついてしまっているのですね。
 床やテーブル(台)の上に寝た姿勢だと、自分を支えようとするときの癖が出にくいので、緊張からゆるんでいきやすいです。

 アレクサンダー・テクニークのレッスンでは、動きを使ってやるワークも多いですが、そんななかで寝た姿勢でワークをやるのは、そのためです。

 立って緊張をゆるめようとすると、ゆるめようとして自分を下向きに押し下げてしまうような場合がありますが、寝ていると、緊張をゆるめることで、ひろがっていくこと、長く広くなっていき、体の奥行きも出てくることが、よくわかると思います。

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 テーブルワークで腕や脚を動かすときに、ふだんの動きとどこが違うかというと、まず違うのは、単純に

  ゆっくり動かす

 ということです。

 腕や脚を、持っていきたい場所に急いで持っていきたい衝動が出るかもしれないけれど、
 その衝動に「ちょっと待って」と言い (inhibition,抑制)、今いる場所からゆっくり、動きを観察しながらゆっくり動かします。

 それだけでも、いつもとちがう動きが出てくると思います。

 もうひとつは、

  全体性を意識しながら動かす

 ということです。腕を動かすなら、背中から指先までの全部の長さと奥行きを意識しながら動かすのです。

 正しい位置に置くためにやっているわけではなく、そのようなことを意識しながら動かしています。

   *****

 教師にワークしてもらうと、自分でやるときとはちがう経験ができるのは、自分の癖から離れること、「やめていく」ということが、他者の助けを借りるとやりやすい、ということがあります。

 教師自身が自分自身のなかで、やめていくプロセスを意識しながら、できるだけ「何もしない手」を使ってワークすることによって、やめていくプロセスを、生徒さんと共有しているからです。

 でも自分自身で同じような手順でワークすることにも、とても意味があります。(「ひとりで寝た姿勢でやるワークのしかた=セミスパインのワーク」の記事を見てみてください。)

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 テーブルワークや、その他のハンズオンのワークで自分自身の変化を感じたら、まずは、

  自分の体の使い方には、そういう可能性があるんだな

 ということを知ってください。そこから動き出すと、いつもと違う動きが出てくるかもしれません。

 同じような体の使い方がすぐにできなくてもいいです。でも、そういう可能性があると知っておくとと、それを選びたいと思ったとき、そういう方向に行きやすくなります。それが、長い目で見て、自分の使い方の選択肢をひろげる第一歩です。

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首が楽になると、グラウンディング(足が地に着く)は自然に起こる。

レッスンやワークショップなどでいただいた、アレクサンダー・テクニークの原理やその他にかんする質問に、答えていくコーナーです。

Q アレクサンダー・テクニークでは、首が大事だと本にも書いてありますが、首を意識すると気が上にあがってしまうのではないでしょうか? 今までむしろ、地面を感じて、エネルギーを下におろすことをいつも意識しようとしてきたので、少し混乱します。

A 首を意識するときに、首を固めていませんか?
そうではなくて、首が楽になっていい、と思ってみてください。

「意識する」といっても、コントロールするのではなく、コントロールのしすぎを手放すことなのです。
とっさに身構えたとき、難しいことに取り組むときなど、とっさに首を固めてしまうことが、私たちはよくあります。
それに気づいたら、それをやめて、
首の通り道が開いていることを思ってみてください。

首には神経がたくさん通っています。その神経をとおって伝達される情報の通り道をひらくことを、思ってみてください。

ただ、首を楽に、というとき、首をぐにゃっとさせてしまう人がいますが、その必要はないです。
それは逆に、やりすぎです。
ぐにゃっとさせると、かえって押し下げて通り道をふさいでしまうし、首や肩回りにプレッシャーをかけてしまいます。
ぐにゃっとさせるのでも、伸ばすのでもなく、その中間のほどよい状態です。
それによって、背骨にそった神経の通り道全体のとおりがよくなるような感じです。
ただ緊張の度合いが少しだけ減るだけなので、見た目はほとんど変わらないし、感覚的にも、変わったという実感がないかもしれません。それくらいで、まずは充分です。

首がほどよく楽になって、通り道がひらかれると、体全体のつながりがはっきりしてきて、不思議と、足が地面に着いている感覚もはっきりしてきます。
同時に、”気”も下におりてきます。

首が楽になることと、エネルギーが下に下りること/グラウンディングは、実は対になっているのです。

・関連記事 「バランスをとることとアレクサンダー・テクニーク」

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「意識する」ということ

「アレクサンダー・テクニークは不思議ですね。意識しなくてよいと言われたので意識しないようにしているのに、どんどん変わっていくので。」
と、生徒さんに言われました。

ときどき、そういうことを言われることがあります。

「意識しなくてよい」とは、ほんとは私は言っていないのですが、今までのその人にとっての「意識のしかた」を、しなくてよい、ということが、その人にとってとても新しいことだったのだと思います。

もしかすると、その人にとってそれまで「意識する」というのは、「こうするべき」「こうあるべき」という正しいあり方をつねに思い描いて、そこに自分のあり方をもっていこうと努力する、ということだったのかもしれません。

でもそれは実は、「意識をする」以上のことをやっているのでは? と、思います。

意識する、というのは、ただ気づきを向ける、ただ注意を向ける、ということで、それ以上のことはやらなくてよいんです。

これがなかなか、多くの人にとって、慣れないことで、
「つい、何かやりたくなってしまうんですよね」「むずかしいですね」と、よく言われます。

やらないことは、やりすぎることより、難しいのかもしれません。ふしぎですね。
でもそれは、ただ慣れていないからで、
慣れれば、そのほうがきっと楽だと思います。

自分を観察するときは、ただ、観察するだけでいい。よい悪いを判断したり、よい方向に持っていこうとしなくてよい。
方向性を思うときは、ただ、「そういう方向性があるのだ」と、思うだけでよい。そっちの方向に持っていこうとしなくてよい。(たとえば植物だったら、待っていれば芽を出して、自然に上に伸びていきます。むりやりひっぱって伸ばす必要はないですよね。)
それが、ただ意識する、ということです。

まあ、人間とは、つい、やりすぎてしまう動物。
その習慣を、少し変えていけたらいいんじゃないかな、と思います。

上に書いた生徒さん、「意識してないのに変わったんです」、と言われていたけれど、実際には意識していないつもりでも、意識はできていたんだと思います。
レッスン中でも、それ以外でも、「へぇ、そうなんだな!」と、体験的に納得したことは、意識に入りますしね。
そのあとも、必要なときに思い出していたんじゃないかな、と思います。

追記:これを書いた後、「ブログ読みました。意識しちゃいけないんですね」と、言われたりしました。
いやいや、そうではなくて、意識をもつのは大事なことです。なにも意識しないで、「おまかせ」がいい、という意味ではないので。。
自分が意識するということを、「どんなふうにしているか」、自分の意識のしかたの傾向・癖を、見てみることをやってみたらどうでしょう? ということを言いたかったのでした。

いや、コメントくれた方は、その意図はわかってくださっていると思いますが、ほかに読んでくださっている方のためにもクリアにしておいたほうがいいかな、と、念のため、書いてみました。

アレクサンダー・テクニークlittlesounds では、レッスンを随時受け付けています。

レッスンは回を重ねると、どのように進んでいくのでしょうか?

アレクサンダー・テクニークのレッスンには、教師によっても、シチュエーションによっても、いろいろな進め方がありますが、littlesoundsでのレッスンでは、「同じことを繰り返す」ことと「新しいことをやってみる」ことの両方をレッスンの中でやります。

教えていて、また自分で学んでいて思うのは、「同じことを繰り返す」部分はとても大事だし、また、とても奥が深く、おもしろいということです。
楽器の練習やスポーツでの基礎練習と同じともいえますが、何回か、実際にやってみると、言葉で聞いたときに思うかもしれない、単調だったりストイックだったりという印象は、なくなっていきます。

繰り返してやることの例をあげてみますね。

・頭~首~胴体の関係性について
・立ったり座ったりする動き(チェアワーク)
・ライダウン(寝た姿勢)のワーク
・歩く
・ウィスパード・アー、呼吸、声を出す
・腕のワーク
・モンキー、ランジ(胴体~股関節~足)
・椅子の背に手をおく
・etc.そのほか

こうやってリストアップしたのを見ただけでは、これがどういうふうに、日常や専門分野に生かせるのか、すぐには想像ができないかもしれませんが、やってみると、日常にも専門分野にも、とてもつながります。

このなかの全部でなくても、いくつかのことをやっていきます。これ以外のことをやることもあります。これらは、やり方は基本的に毎回ほぼ同じなのですが、そのときのその人の体の状態や、そのときその人の意識の向け方によって、同じことをやっているとは思えないくらい、違う結果があらわれてきます。
このようなことを、普段の癖や習慣的な反応と、新しい可能性と、行ったり来たりしながら繰り返して、レッスンは進んでいきます。あなたの体の反応も変化するし、新しい可能性もさらに増えてきます。

初回のレッスンや、最初の数回のレッスンのうちは、大まかな違いを発見し、認識するだけで精一杯だと思うし、それで十分です。大まかであっても、「自分のからだはこうなっている」また「自分とはこうだ」という認識は、思い込みにすぎなかったということ、そして、それにおさまらない自分のなかの新しい可能性を発見して、驚く人が多いです。

それだけでも学びになると思います。ただ、それで、「アレクサンダー・テクニークはこういうことか」と、結論づけてしまうのは、少々勿体無いように思うこともあります。もちろんそれは、その人それぞれの自由なのですが。でも、これからもっとおもしろくなるんだけどな、と、思うこともあります。

その後で日常生活に戻って、またレッスンに来ての繰り返しのなかで、今までの癖と、新しい「自分の使い方」との折り合いがだんだんついていくにつれ、より深い部分や、細かなところに気づきが起こり、より深い変化が起こるようになってきます。

「同じこと」をやっても、その中身が、やるたびに、深まっていきます。

レッスンの合間に、その人の「日常」を生きる時間があるというところが肝です。

自分自身について根本的に学ぶためには、急いでいろんなことをやろうとするよりも、「同じこと」を繰り返して、その人なりの日常生活に少しづつ落とし込んでいくことが、大変、意味があります。

人によってはもちろん、時間をかけなくても、すでに機が満ちていて、短時間で多くのことを得る方もいます。それも、人それぞれです。

人によっては、たとえば楽器を演奏される方は、楽器を構えること、ロングトーンで音を出すことなどを、上のリストに加えてもいいです。ただ、その人にとって意味が大きくなりすぎていないシンプルなことから入るほうが、やりやすい場合も多いです。

——

「新しいことをやってみる」のは、応用編といえるでしょうか?

・特定の動きをやって、それをみてみる
・からだの特定の部分やその動きを少し詳しく見てみる
・日常動作、仕事の動作、専門的な動作、趣味の動作に応用してみる
・歌を歌う、しゃべる
・特定のシチュエーションを設定して、そのときの自分の反応をみてみる
・そのほか、いろいろ

レッスンを受け始めて、人によっては、レッスン時間の中で上のようなことを直接やらなくても、すでに、日々の暮らしや専門分野で、いろいろなことが変わり始めているのを実感している方も少なくないと思います。たとえば声のことを直接、レッスンの中で何もやっていなくても、「声が出やすくなった」と言われたりすることはよくあります。それでも、レッスンの中でやってみることで、アレクサンダー・テクニークを、日常や、専門分野にどう応用したらいいかが、より、わかりやすくなると思います。レッスンの時間のなかでもなるべくこのような時間はとっていきたいし、あるいは、家でどのように応用できるか、考え方のヒントや、陥りやすい注意点もあわせて、お話ししていきたいと思います。

かりに教師がその分野にあまり詳しくなさそうでも、ご自分の状況を説明して質問してみてください。教師はわからないことは、わからないと言いますが、教師がわからないことであっても、アレクサンダー・テクニークの原理と考え方を使って、一緒に検証し、実験してみることで、自分の癖がわかり、別の可能性がひらけてくることはとても多いです。

アレクサンダー・テクニークの原理と考え方を使って、あなたの専門分野を違う見方で見直してみる機会として使ってください。

—–

アレクサンダー・テクニークのレッスンには、一般的な教室と違って、決まったカリキュラムはありません。
(学校によってはあるところもあるようですが、あってもガイドラインとして、あまりそれにしばられないで進めていると思います)。
その人のプロセスをみながら、その人に合わせて進めていきます(←特に個人レッスンでは)。

アレクサンダー・テクニークは知識として覚えて身につける学習とは違う種類の学習だからです。
あなた自身が自分を知っていくプロセスのなかで、体験的に、確かめながら、自分のものにしていくプロセスです。
ひとつのことを、その人に必要なだけ時間をかけて、その人の身になるように進めていきます。
落ちこぼれることもないし、優劣を競うこともありません。
教室のなかでたくさんのことをこなしていなくても、自分に必要なだけの時間をかけて確実に身につけたものがあれば、それはあなたものです。それを使って、日常であれ、専門分野であれ、思いがけないシチュエーションでさえも、人生のあらゆることに応用していってください。

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アレクサンダー・テクニークの学び方

アレクサンダー・テクニークのレッスンに来られた後、なるべく早くマスターしたいと、”やろう”としすぎてしまう人がいます。

でも、身につけるためには、急がないのが近道です。

アレクサンダー・テクニークは、「やり方」を学ぶのではなく、「やりすぎをやめること」を学ぶことなのです。自分が何をやりすぎているかに気づき、それをやめていくことを学習するのがアレクサンダー・テクニークです。

アレクサンダー・テクニークのレッスンのなかで方向性について学んだり、あるいはボディ・マッピング的な知識を得ることがありますが、それは自分の動きや自分の癖や、自分自身について認識するための手助けになってくれると思います。
でもそれは、絶対の「正解」ではないし、「正しくできるように見につけるべきこと」ではないのです。あくまで「地図」であって、現実の体はひとりひとり違うし、現実は一刻一刻、常に変わりつづけています。

自分が古すぎる地図を持っていて、それに頼っていたことに気づいたら、新しい地図を手に入れると、旅をするのに役に立つでしょう。だからといって、「地図」を無理に現実にあてはめようとする必要はありません。地図を参考にして、地図にも載っていない自分自身に驚きながら、旅を続ければいいのです。

レッスンでの体験がここちよい体験だったとしても、それを「再現しよう」としないでください。「再現しよう」とするとかえって固くなってしまうことがあります。

また、「正しく」やろうとしないでください。「正しく」やろうとすることによっても、固くなってしまうことがあります。レッスンでの体験が唯一の「正解」ではなく、そのときの正解は、そのときによって違うし、それは、やってみないとわかりません。

レッスンで「方向性」について学びますが、「方向性」は、「形」や「位置」とは違って、限定がないものです。「方向性」を思うことで、自分が自分を縮めていたり、制限していたことに気づくかもしれません。気づいたら、やめることができます。そして「方向性」は一方向ではなく、実はあらゆる方向性が働いています。

「やめる」ことができるのは、ほんの少しづつです。
一度に全部のことを手放せたらいいと思うかもしれませんが、それができたとしても、多くの人はパニックになってしまうかもしれません。そして、揺り戻しが起こりやすいかもしれません。
アレクサンダー・テクニークでも時には大きな変化が起こることもありますが、基本的には、少しづつ、自分が対処できるだけづつ、変化していく方法だと思います。

とはいえ、少しの変化がとても大きく感じられることもあります。
長年積み重ねてきた自分のやり方と違うことをやるということは、小さなことでも大きなことです。
でも、自分と自分の体を信頼してあげてください。そして、「やろう」としすぎて固めているのに気づいたら、それは手放す。
自分が無理していなければ、通常は、無理なことは起こらないと思います。

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「上から吊り下げられているように?」

レッスンの後、「首が上から吊り下げられているように感じます」と、言われたことがありました。

この、「上から吊り下げられているように」というフレーズは、よい姿勢についての話が出るときに、よく使われるフレーズのようですね。

でも、これには落とし穴があると、私は思います。

よい姿勢になった結果、「首が上から吊り下げられているように感じる」ということは、あると思います。
でも、それを、自分で「やろう」とすると・・・?

何か首を固めてしまわないでしょうか?

こう考えることで起こりがちなことは、首を持ち上げて固定して、首から下を押し下げてしまうことです。

首を固めているのに気づいて「あ、いけない、いけない」と、動かしてほぐしたりしている人を、見かけます。固めながら同時にほぐして、ほぐしながら同時に固めているような感じです。なかなかうまくいきませんね。

アレクサンダー的代替案は、
「首を背骨全体の一部であることを思い出し、頭はその延長にある」

という考えです。それを思ってみると、どうでしょうか?

もし難しく感じられた場合は、床の上などに仰向けになって、同じこと、つまり、

「首を背骨全体の一部であることを思い出し、頭はその延長にある」

ということを思って、そのまま少し時間を取ってみてください。
何かを「やろう」としなくていいです。
体がどういうデザインになっているか、体が思い出すための時間を取る、という感じです。
それからもう一度立ってみてください。
どうでしょうか?

とても楽かもしれないし、
あるいは、
いつも立っているときとのバランスの取り方と違って、少し不安感を感じる場合もあるかもしれません。

そのときに、早くバランスを取ろうと、また「固めるパターン」に入るのではなく、そのかわりに、子どもがはじめて立ったかのように、新しいバランスを探してみてください。

上下のひろがり、左右のひろがり、奥行きのひろがりはどうでしょうか?
それを、味わってみてください。

【もうひとこと】

レッスンのワークの後、今までの自分のパターンから抜けて、新しい経験をすると、いろいろなイメージが湧くことがありますよね。
人によってはそれが「首が上から吊り下げられているように」かもしれないし、「ふわっとした感じ」だったり、人によって、そのときどきによって、いろいろだと思います。

そういうイメージや、感じる印象に、正しいも間違いもありません。
いろいろなことを感じることは、どれもよいことだと思います。

上で私が「落とし穴」と書いたのは、
最初に感じた状態を、再現しようとするときの落とし穴、なのです。

生き生きとした、気持ちのよい体験をしたら、それを再現したくなるのは当然ですよね。

ただ、そのときの印象やイメージを覚えていて、その印象やイメージを再現しようとすると、たいがい、自分を固めてしまうことになりやすいのです。

再現したいときには、結果としての印象やイメージを再現するのではなく、どうやったらそういう結果に至ったか、どうやってそのように変化したか、そのプロセスを思い出すことが大事です。

小さなことかもしれないけれど、そのプロセスのなかで、どこかで、何か、いつもと違う「考え」を持ったり、何かについて、いつもと違う「とらえ方」をしていた、ということがないでしょうか? 

そのへんに、目を向けてみましょう。

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「考えないほうがいい?」

緑のカーテン成長中100602「考えない方がいいみたいですね。」
「考えないときの方がいい感じな気がします」。
と、生徒さんが言うことがあります。

それは、今までの「考え方の癖」を手放したら、うまくいった、
という意味ではないでしょうか。

今まで、「考え」ながら、何かしているとき、
考えることで自分のどこかを固めてしまっていたのかもしれません。

私も昔はそうだったのですが、自分を固めると集中できて、うまく考えられているかのように思っている人は多いですよね。
体のどこか一部分をぎゅっと固めていたり、
あるいは視野をとても狭くしていることも多いのではないでしょうか。

そういうときには、実は考えてもどうどうめぐりだったり、からだや心とうまくつながらないような、頭の中だけの考えにしかなっていないことが多いのではないでしょうか。

自分を固めないで考えられるかどうか、やってみましょう。
「自分を固めるのをやめると、何も考えていないような気がする」という人は多いです。
「なんだかバカになったような気がする」と言った生徒さんもいました。

その実、アイデアの流れが活性化され、体も生き生きしてくることが実感できると言われます。
それは、「考えていない」のではなく、新しい「考え方」なのかもしれません。

もうひとつの「考え方の癖」として、結果に急ぎすぎる、というパターンがあります。
それについては、また後ほど書こうと思います。

アレクサンダー・テクニークでは、thinking in activity(動きのなかで考える)ということが大事だと言われています。thinking のパターンを変えることで、習慣を変えることができると言われています。

まずは、自分が考えるとき、どんなふうにして考えているか、自分の考え方の癖を、観察してみてはいかがでしょうか?

写真は、鵠沼スタジオで成長中のゴーヤです。夏になるころには緑のカーテンになっていたらいいなあ。

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姿勢について、フォームについて

Qアレクサンダー・テクニークは、姿勢のワークなのですか?

最近、アレクサンダー・テクニークを姿勢の矯正法だと思って来られる方が増えてきたような気がします。

でもそうじゃないんですよね。

たしかにアレクサンダー・テクニークをやることによって姿勢が良くなることは多いけれど、それは結果に過ぎないのです。すぐに結果を得ようとして、直接的に、形としての姿勢だけを整えようとすることは、あまりよい結果につながらないと思います。

姿勢とは、”姿の勢い”と漢字で書くように、本来”勢い”だったり、動きのことを意味しているんだと思います。

——

たまたま雑誌で、マラソン指導者の小出義雄さんの言葉をきのう読みました。

「呼吸の仕方、手の振り方、そしてフォーム。普通の指導者はそこを強制する。でも僕にしてみれば、どうでもいいことなの。バランスがとれればいいわけで、速くなれば自然とフォームなんて良くなる。自分の身体に合ったフォームができる。矯正したフォームだと、人間ってのはつらくなると絶対に元に戻っちゃう。手なんてぶらんぶらんでもいいんだよ。」

まさにそのとおりだと思います。
みなさんのなかにも、姿勢を矯正しようとして、つらくなって元に戻っちゃった経験をお持ちの方はいらっしゃるのではないでしょうか?

高橋尚子選手は当初、首が左に傾いて走る癖があったそうですが、小出監督は、そこだけは矯正したそうです。その矯正方法とは、

「路上で左側通行を止めて、右側を走らせたんだ。いっつも対向車に怒られてね(笑)。次第に首が起きて、外に向いていた足もまっすぐ出るようになった。ストライドが2、3センチ違ってきた。」

姿勢とか動きというのは、状況に適応しようとするなかでつちかわれていくものなのですよね。形だけ直そうとしても難しいのだと思います。

「矯正っていうのはその程度。ひとつ修正してあげればすっといろんなところが上手くかみ合うようになる。それを見極めてあげるのが指導者の仕事。」

う~ん、むずかしいけど大事なことですね。

——

ではアレクサンダー・テクニークでは何をするのかというと、そういう、自分がいろんな状況に適応しようとするときに自分をどう使っているのか、それを丁寧に観ていく、というテクニックです。
「姿勢を矯正する」というより、より全体的(holistic)で、より繊細で、よりダイナミックなアプローチだと思います。

ただそれだけに、より忍耐強さが必要とされるということはあるかもしれません。

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