カテゴリー別アーカイブ: アレクサンダー・テクニーク

あがり症(続き)

先日書いた「あがり症」の話の続きです。

先日の記事では、「あがり症」「人前での緊張」に対処するためには、ふだんのことを見直してみることが有効だということについて書きました。実際私は、ふだんのことを見直すことによってあがり症が軽減する例をとても多く観てきています。でも同時に、人前で立ったときの本番で起こることをとらえ直すことも、やはり役に立ちます。

・緊張している自分を冷静に見てみる。自分が緊張しているということに反応するのをやめてみる。

本番で緊張するというのは、実はあたり前のことです。
「部屋で鼻歌を歌っているのと同じように、ステージでも歌えたらいいのに」と思ったことがある人はいると思いますが(私はそう思ったことがあります)、
実際は、お客さんたちがわざわざ時間を取って、場合によってはお金を払って、聴きにきてくれている特別な時間であり、場所なので、やはりそれは、緊張するに値するシチュエーションなんですよね。その大切さをしっかり認識してるから、その時間を大切に思っているからこそ緊張するんだと思うのです。なので、「家でと同じように」「ふだんどおりに」というのはできないのがあたり前だと思います。「ふだんどおりに演奏しなくちゃ」と、無理に思わない方が自然だともいえます。

そう考えたら、緊張する自分を否定しなくていいんだな、と思いませんか?

ああ、緊張しているなあ、と思いながら、それを変えようとするのはやめて、

緊張している自分だけど、今、私はこの歌を歌いたい(または演奏したい、パフォーマンスしたい、話をしたいetc)と決めた。
聴いてくれてる人たちもいる。
緊張しているままで、心をこめて歌おう。
と。

その歌(演奏、パフォーマンス、話)が伝えようとしているものは何だっけ、というのをもう一度思い出して。思い描いてみて。

「ふるえ」が起こっているかもしれない。
でもふるえているのは、固まっている自分をほぐそうとしているのかもしれない。
じゃあ、ふるえているのにまかせてみよう。

ただ、足の下に床があることだけ思い出してみよう。

ふるえていても、足下にはちゃんと自分を支えてくれている地球がある。

そんなふうにして歌って(演奏して、パフォーマンスをして、話をして)みると、
実は、家で歌うときと同じようにはできないけれど、
家で歌うとき以上の演奏ができることだってありえるのです。

「いつでもふだんどおりに」という以上の可能性が、そこにはあるのです。

あがり症の方に

音楽家などの方から、コンサート、あるいはオーディションなどの本番であがってしまって普段どおりに演奏できない、と、相談されることがよくあります。「ふだんは、そんなこと起こらないのに、手がふるえたり、動かなくなったりする」と。
「そんなときどうしたらいいか」ということですが、本番の「そのとき」に対処できるアイデアも、ありますが、それと同時に「ふだん」のことを見直すこともやっぱり大事なんですね。

「ふだんは問題なく弾ける」と、たいがい、言われるし、それは本当だと思うのだけれど、ふだんも実は、問題ない程度に起きているなにかがある。ふだんなら問題がない何らかのその人の傾向が、本番になってアドレナリンが出てきたときに、強調されて現われてくる。そしてそれが、自分のパフォーマンスを邪魔することになってしまったりします。

それを変えたいとか、見直したいと思うのなら、やはり、「ふだん」のことを見てみることからはじめるのが、早道なのではと思います。

たとえば演奏家は、指の動きについてはすごく意識が高いのだけど、胴体とか、足とか、首とかのことは意識したことがなかったりする人が多いようです。また、楽器を持って演奏する人でも、ひじについても意識したことがないという人もいます。また管楽器奏者で唇のことばかり意識しているという人もいたりします。

その部分での動きに「自分は問題がある」と思うからこそ、そこばかり意識するようになっているのですが、その意識の持ち方が逆効果になっていることがあります。問題があるからこそ、その「問題」からいったん離れてみて、全体に戻ることが、問題解決の早道であることが、実際は多いのです。

自分という体全体を使って楽器を演奏しているときに、意識が、一部分だけに偏っていると、サポートをなくしてバランスを崩してしまい、無理やりバランスをとるために体を固めざるを得なくなってしまったりします。体を固めることが必ず悪いというわけではないけれど、身体の一部分だけを固めて、それ以外の部分と切り離されているような状態が長く続くと、苦しくなってしまう場合が多かったりします。

そういう傾向が大問題になっているときではなくて、問題と言えないほどのわずかな傾向であるときのほうが、変えることがしやすいかもしれません。

私のアレクサンダー・テクニークのレッスンではそういうことをサポートします。

ときによっては楽器をかまえる以前のところで、ただ座るという動きをやってみたり、「楽器をかまえる」というのをひとつの動きとして見直してみたりもします。

そして、その人にとって簡単に弾けるフレーズを弾いてみる、そして苦手なところを弾いてみる、それぞれ何が起こるか見てみます。その人、その時によって、どこがクリティカル(=その人にとって決定的な瞬間)かは違うので、お会いして実際に立ちあいながらライブですすめていきます。

そのうえで、人前でパフォーマンスしてみると、緊張の度合が減っているということはよくあるのです。

「ふだん」のことと、人前に立ったときなどの本番の状況のことと、両方を見てみるのが、あがり症や、緊張への対処のワークとして有意義だと思います。

→あがり症(続き) 本番のとき

アレクサンダー・テクニークlittlesoundsでは、東京と神奈川で個人レッスンを、それぞれ週に3日づつ行っています。
レッスン・スケジュールとお申し込みはこちらです。

字を書く

ある日のアレクサンダー・テクニーク・レッスンのなかで、

生徒さんが、「字を書くこと」のをやりたいとのことで、やってみた。

ペンで字を書くというのも、体全体の動きで、自分全体を使ったアクティビティ。

字を書くときも、足も大事。

手だけで書こうとすることによって、手に余計な力が入ったり、逆に力が入らなすぎたりしている場合が多いんですよね。足をつうじて地面からのサポートを受け取っていることを認識できると、適度な力を必要なだけ使えるようになるし、微細な動きもしやすくなったりします。

そんなふうに認識してみると、字もイキイキしてくるし、書いてて疲れなくなってくる。

「字を書くの苦手でコンプレックスで、字はなるべく人に見せたくない」と言われていたけど、最後のほうに書いた字は、とてもすてきになっていた。

認識が変わるだけで変わることって、ある。
さらに練習するともっと変わってくるだろうけれど。

別の生徒さんとは、試験勉強のために英語を音読するのをやったり、
また、趣味のアクセサリー作りのアクティビティと、台所仕事と庭仕事をやったレッスンも。

普通に日常を過ごす行為のひとつひとつが、今はやりの言葉で言うとマインドフルになってくると、疲れなくなってくるし、肩こりや腰痛の予防や改善につながる。そしてなにより日常が楽しくなってくる。

そのためには、ちょっとしたコツがある。
そのコツは、文章でどこかに公開するというような万人向けの方法でもある程度は伝えられても、限界がある。その人ならではの癖を、どう見直してみるか、ということとかかわりあっていることなので。

うたと私と、アレクサンダー・テクニーク

私にとっては、たまに人前で歌うということを自分に許せるようになったのは、アレクサンダー・テクニークとの出会いが大きかった。

歌は子どものころから好きだったし、合唱などは機会があればしていたけれど、ひとりで人前で歌うのは、まず「声が小さい」「聞こえない」と言われること、それに、そもそも「人前に立つ」こと自体が、私にはとても難しいことだった。

でも合唱でなくて、ひとりで、(あるいはひとりづつ違うパートで数人というのも好き)歌うことが、したかったのだ。

大学のときにブルーハーツという人たちを知って、あこがれたなあ。あんな風に歌えたらと。

でも、どうしたって、キャラが違って、あんなふうにはなれなかった。

自分じゃないものになろうとしても、よけいに緊張するばかりだった。

まず自分のあり方、自分の声、自分の体、自分のキャラクター、そういうものを認めて、そこから歌う、ということが、できるようになる必要があった。

それは、技術じゃない何かだった。

「声が小さい」のは、緊張とのつきあい方がわかってきたことと、体のなかのつながり、全体性についてが、わかってきたおかげで、昔よりもましになったけど、いまも声量があるとはけして言えない。だけど声量の”量”はなくても、自分の内と外で共鳴するものを届けることができるということを知った。

うん、やっぱり、もっと歌いたいな!
自分のままで。

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5ヶ月の赤ちゃんを連れてのお母さん

きょうは5ヶ月の赤ちゃんを連れてのお母さんのアレクサンダー・テクニーク・レッスンでした。抱き上げるところや、抱っこするところ、揺らして寝かしつけるところなど。腰に負担が来ちゃっていたうごきを見直したら、もっと赤ちゃんとお母さんと一体になった動きになりました。

赤ちゃん、私をじーっと見ていて、それからにこにこしだして、元気よく寝返りしたりしてて、楽しかったです。

アレクサンダー・テクニーク・レッスンのひとこま - パノラマ視野

「何か下向いて歩いてますね~」
「とくに集中するものがないときは、そうですね~」
「集中しなくていいけど、パノラマ視野で、左や右、上、下、部屋全体を大きな視野にいれて歩いてみたら、どうかな?
視野が立体的になったら、自分の体も立体的に感じられるようになるかもしれませんね」

「あ、掛け軸が前来たときから変わったんですね」
それから窓の外を見たら、
「あ、大きな鳥!」
大きな鳥が庭に来ていて、つばきの花びらを熱心に食べていた。
一羽、そしてもう一羽。

私自身もそうだけど、日々起こっていることで、気づいていないこと、いっぱいあるな。

デビ・アダムス(Debi Adams アレクサンダー・テクニーク教師)2017年1月来日

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今年の1月にひきつづき、来年の年明けにも、ボストンのアレクサンダー・テクニーク教師、デビ・アダムス(Debi Adams)さんが再び来日します。

デビは、私が2001年から12年間、ほぼ毎年訪ねていたボストンのアレクサンダー・テクニークの学校の先生です。
学校のディレクターのトミー・トンプソンが、精神的支柱として、アレクサンダー・テクニークの哲学を教えてくれる存在だとすると、デビは、それを具体的にわかりやすく、それぞれの人の毎日の生活や行動に落とし込む手助けをしてくれる存在でした。

彼女はピアニストでもあります。そして、2013年にボストン音楽院に新設されたアレクサンダー・テクニーク・トレーニング・コースのディレクターです。

今回、音楽家向けのワークショップと、
アレクサンダー・テクニーク教師と学んでいる方のためのワークショップ、そして個人レッスンを行います。
ワークショップは、ひとりひとりのワークの機会が受けられるように少人数で行います。
以下のリンク先に内容紹介と、お申し込みフォームがあります。
みなさんのお申し込みをお待ちしています。

1月5日(木)アレクサンダー・テクニーク教師、トレーニー向けワークショップ(藤沢鵠沼)”座ること、立つことを教える”

1月6日(金)デビの個人レッスン(藤沢・鵠沼教室)
10:30、11:15、12:00、13:45、14:30、15:15、16:15

1回45分12000円
(ワークショップご参加の方は1回10000円)

1月7日(土)音楽のある暮らしに活かすアレクサンダーテクニーク(東京)

1月8日(日)“レファレンス・ポイント” デビ・アダムスを迎えてのアレクサンダー・テクニーク・ワークショップ教師と学んでいる方のためのワークショップ(東京)

1月10日(火)アレクサンダー・テクニーク教師、トレーニー向けワークショップ(藤沢鵠沼)”座ること、立つことを教える”

1月11日(水)デビの個人レッスン予備日
1月12日(木)デビの個人レッスン(東京・文京教室)
14:00、14:45、15:30、16:15、17:00、18:30

1回45分12000円+通訳代1500円
(ワークショップご参加の方は1回10000円)

●講師紹介 デビ・アダムス(Deborah Fishbein Adams)

ATI公認アレクサンダー・テクニーク教師。トミー・トンプソンのもとで教師養成トレーニングを受けました。ほかに、ブルース&マーサ・ファートマン、リカ・コーエン、デビッド・ゴーマンほかたくさんの教師たちと学んできました。現在デビは、ボストン音楽院にて、音楽家、ダンサー、俳優に向けてアレクサンダー・テクニークを教えると同時に、音楽院内にできたアレクサンダー・テクニーク教師養成トレーニングのディレクターでもあります。

デビはピアニスト(ボストン大学音楽部ピアノパフォーマンス科修士)で、何年も前に腱鞘炎で悩んでいたとき、アレクサンダー・テクニークに出会ったことが、最終的に痛みのない人生につながりました。このパワフルなワークをほかの人たちにシェアする責任を感じています。

参考までに過去ブログの記事です。

デビ・アダムスさんのワークが終わって-1 ”reference point
デビ・アダムスさんのワークが終わって-2 重力とサポート
ピアニストのための12のおきて
デビ・アダムスさんのレッスン&ワークショップを終えて

1月7日(土)音楽のある暮らしに生かすアレクサンダーテクニーク(デビ・アダムスを迎えて)

人前で演奏するときの緊張、初見演奏、練習のコツ――どのあたりに関心をお持ちでも、アレクサンダーテクニークの基本原理を、自分にあてはめて活用することができます。
デビは演奏家として仕事のあらゆる面にアレクサンダーテクニークを活用しています。
アレクサンダー氏の発見に根ざした「インヒビション(抑制)」と「ディレクション(方向性)」について、デビは新鮮な視点を持っており、さらに、そこにテンセグリティや神経生理学などのもっと最近の概念も取り入れています。
参加者はご自分の楽器や疑問・質問を是非お持ちください。
ピアノのある部屋で行う予定です。

あがり症について
正真正銘のあがり症も、もっと程度の軽い緊張も、人前で演奏するときの緊張体験がどんなものであれ、
アレクサンダーテクニークはそうした演奏体験が楽しさや喜びの体験に変わる可能性を提供します。
緊張や不安の症状を自分がどう解釈するかによって、いかにぎこちない道を転げ落ちてしまえるか、
また同じ症状を新たな視点でとらえることで、心の奥底では可能だと知っているような演奏体験へ
いかに変容していけるかについて見ていきます。

●講師紹介 デビ・アダムス(Deborah Fishbein Adams)

ATI公認アレクサンダー・テクニーク教師。トミー・トンプソンのもとで教師養成トレーニングを受けました。2002年からボストン音楽院にて、音楽家、ダンサー、俳優に向けてアレクサンダー・テクニークを教えてきており、2012年には音楽院内にできたアレクサンダー・テクニーク教師養成トレーニングのディレクターになり教師を養成しています。

デビはピアニスト(ボストン大学音楽部ピアノパフォーマンス科修士)で、何年も前に腱鞘炎で悩んでいたとき、アレクサンダー・テクニークに出会ったことが、最終的に痛みのない人生につながりました。このパワフルなワークをほかの人たちにシェアする責任を感じています。

今回、東京でのデビのそのほかのワークショップと個人レッスンについてはこちら
ボストン音楽院サイトのデビのページ(英語)
デビの個人ウェブサイト(英語)

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日 時 : 1月7日(土)10:30~16:30
会 場 : STUDIO1619
西武池袋線「江古田」駅より徒歩6分、
または地下鉄有楽町線「新桜台」駅より徒歩1分
http://www.studio-1619.com/map.html
参加費 : 16000円(事前振込。お申し込み後、振込先をお知らせします。)
定 員 : 10名 おかげさまで満員になりました。以降、キャンセル待ち受付とさせていただきます。(6日、12日の個人レッスンは空きがあります。よろしければどうぞ。)
講 師 : Debi Adams (通訳つき)
お申し込み、お問い合わせ:
yuriko@littlesounds.com までメールで以下をお知らせください。
1) お名前 2) お電話番号
3) このワークショップをどちらで知りましたか?
4) その他、参加するにあたって、特に興味があることなどをお知らせください。)

楽器を運ぶ。

ギターと機材を持って、いろいろな土地に演奏しに行くギタリストの方のレッスン。
今までのレッスンのなかで、楽器の演奏はだいぶ楽に自由になってきたとのこと。でも実は、移動のときに楽器や、機材の入った鞄を持ち運ぶことが、演奏以上に負担になっているとのこと。

そこで、その日はちょうど、ホイールつきかばんと楽器を持って来られていたので、外に出て、ホイールつきかばんを持って歩くことをレッスンでやることにした。

腕の力だけではなく、自分全体が移動するのにかばんが一緒についていく、と意図することと、それを邪魔しているのをやめること。その人の場合、それがどういうふうに起こっているか、具体的に観て、気づきを向けてみる。

それをやってから、部屋に戻り、楽器の演奏もやってみた。
そうしたら、演奏がいつも以上に、自由でなめらかで、いい音になっていた。

ふだんの動きと演奏は、ひとつながりなのだ。
演奏のときのことだけでなく、日常の動きを見てみることで、演奏に違いが出てくることは、はじめはイメージしにくい人が多いようだが、実際にやってみると納得する方が多いです。