介護をする方、対人援助職、セラピストなどの方

  • ご家族、またはお仕事で利用者さん/患者さんのお世話をするとき、自分自身のことはどうしても二の次になってしまいがちです。でも実は、だれかのお世話をするときこそ、介護する人が自分の使い方に目を向けてみることが大事です。

    介護をする人が、無理な自分の使い方をしながら、相手が起き上がったり、椅子から立ったり、歩いたりするのを助けようとすると、相手の人も、無理やり動かされているように感じ、抵抗感を感じてしまってうまくいきません。また介護者自身も、腰を痛めたり、首を傷めたりしてしまいがちになります。

    あなたの体の使い方を見直してみましょう。
    それまで「(患者さん)が体が固いのだから思うようにできなくてもしかたない」と思っていたようなことが、あなたの体の使い方が少し変わることで、やりやすくなるかもしれません。

    あなた自身がより楽になり、疲れにくくなるのと同時に、相手の方に伝わるサポートが、より自然に、よりきめ細かになり、相手の方はそれを受け取りやすくなります。お互いが楽に、ケアし、ケアされやすくなります。

    また体の使い方を見直すことで、心理面も楽になります。体と心はひとつのもので、相互に影響しあっているので。焦りや心配が減ると、より動きやすくなり、お互いの関係性もより滑らかになるかもしれません。

    介護が必要な方と、介護者のペアレッスン:おふたりで1回約40分7000円で受け付けています。

    対人介助の仕事で起きあがるのを助ける様子
    illustrated by pantaya




    ご家族や患者さんの動きを助ける、車椅子を押す、一緒に歩くetc.

    ベッドから体を起こすのを助けたり、椅子から立つことを助けたり、着替えを助けたりするとき、どうすればいいかは理屈ではわかっていても、実際にやろうとすると、重く感じたりして、思うようにいかないことがあります。

    よくあるのは、手順は正しいのだけれど、構えてしまうことで、手でぎゅっと相手を掴んでしまっていたり、手の力が入りすぎて体全体が上手に使えていなかったり、ということがあります。
    どうすれば適切な力を使えるか、見てみましょう。

    レッスンのなかで、介助の動きを再現していただき、アレクサンダー・テクニーク教師が患者さん役になって、抵抗を感じるときには介助者のどこに不必要な力の入れすぎがあるのか、力をいれすぎなくても動けるためにはどうしたらよいかを探求する、そんなレッスンができます。
    アレクサンダー・テクニークの原理を使って自分のからだ全体を使ってやってみましょう。

    頭と脊椎にちょっと意識を向けてみること、「モンキー」とか「ランジ」などとアレクサンダー・テクニークで言っている動きを取り入れることなどで、ずっとやりやすくなる行くことがあります。

    もう一つのポイントは、「やってあげよう」「やってあげなくちゃ」という意識が強くなりすぎていないか? というところです。

    動くのは本人。「本人が動くのを助ける」ということを原点として大切にしましょう。
    力の衰えや、麻痺などがある場合であっても、ご本人には動こうとする意欲があるはず。
    どのようにしたら、そのご本人の意欲を活かせるか? そこにフォーカスをあてつつ、併走者として一緒に動く。介助者がそういうスタンスを保つことで、お互い驚くほど楽に動けるようになることがあります。

    そして、「急ぎすぎないこと」。
    目的地まで早く行かなきゃ、とか、着替えを早くしなきゃ、とか、思いがちかもしれません。
    でも、まずは、目的に向かう前に「今、ここ」に居る。一呼吸の間でいいので、そういう一瞬を持つと、その後の動きがずっとやりやすくなります。

    車椅子を押す、一緒に歩く、などについても、お互い楽なあり方でできるようになると、介護者と介護される人が、同じ景色を見ながら、一緒に歩く、より楽しく充実した時間を共有できるようになるでしょう。

    鍼灸・整体などの施術やマッサージに、アレクサンダー・テクニークを活かす

    セラピストや鍼灸師、整体師として施術やマッサージしていて、相手の人を楽にしてあげる一方で、施術者の方が肩凝りや腰痛になってしまうという方が実は結構いらっしゃいます。
    アレクサンダー・テクニークの考え方を参考に、自分の使い方を見直してみましょう。
    同じ施術をしていて、より楽な体の使い方が見つかる可能性があります。
    「体を楽に使ったら、力が弱くなってしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、意外にそうではないのです。むしろ楽に体を使うことで、力の無駄遣いが減ります。力が変な方向に逸れてしまわなくなるので、相手にちゃんと伝わるようになります。それによって、安定感、安心感が増します。

    応用編として、「まず自分」ということを理解していただいている施術者の方向けに、ご希望があれば、クライアントさんの楽な動きの可能性を施術者としてどのように引き出せるか、ケースとしてヒントをお話することもできます。

    心理士、カウンセラー、対人援助職の方、人の話を聞くときに

    心理士、カウンセラーの方は、人間心理や対人関係についてたくさんの勉強をされてきていますが、体のことについてはあまり考える機会がなかった方が多いかもしれません。でも、体と心はひとつのものなので、体に目を向ける時間を持つと、いままでの経験と勉強してきたことの下地がより生きてくるきっかけになったりします。そして人の心理への理解も深まり、より対処しやすくなるでしょう。

    また、心理士、カウンセラーなど、対人援助職の方は、実際の仕事の場面においてシリアスな内容の話や、感情が動かされるような話を聞きつつ、適切な対応をする必要がありますね。そんなとき、座ってじっとしていながらも、体の中ではとても大きな動きが起こり続けています。感情も、動きなのです。実際に筋肉のはたらきや呼吸に影響します。また同時に、無意識にそのような動きを抑えようとするということも起こっていたりもします。

    そのような動きも、緊張感も、体全体の協調作用の一環で、体に備わっている必要な働きです。ただ、仕事が終わって家に帰った後にも緊張がなかなか緩まないことで、慢性疲労や、肩凝り、首凝りなどにつながるおそれもあります。
    終わったあと、疲れをリセットしやすい体になるために、アレクサンダー・テクニークが役に立ちます。

    座って話を聞くときに、自分自身が立体的で、大地に支えられていて、集中しながらも過度に緊張していない、そういう状態でいるために、アレクサンダー・テクニークの原理を使って、どんな工夫ができるか見てみましょう。
    自分自身が大地から支えられていて、自分の内側に充分なスペースが感じられていると、相手の人に適切に共感することがより楽になるでしょう。
    自分自身をケアするのと同時に、相手の方をケアしている、そんなことが起こり得ます。

    カウンセラーでなくても、ご家族のなかで、親の話を聞くとき、子どもの話を聞くとき、パートナーの話を聞くときも、同じようなことができますね。

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    ※関連リンク:レッスン体験談「介護職の方の体験談」

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